この記事では、薬機法(旧・薬事法)とは、どんな法律なのか?について、わかりやすく解説します。
『薬機法』とは「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の略称を指し、以前、薬事法と呼ばれていた法律が2014年11月の改正によって生まれた法律です。
『薬機法管理者』の資格取得は気になるけれど、そもそも『薬機法』について、正確に理解したり、おさらいしたいという方は、ぜひご覧ください。
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『薬機法』とは
『薬機法』は、下記の有効性や安全性を確保するために定められました。
- 医薬品
- 医薬部外品
- 化粧品
- 医療機器
- 再生医療等製品
当時の主な改正ポイントは、医療機器の規定が独立した点。
そして再生医療等製品の規定が新設された点で、立法趣旨は薬事法と大きく変わりありません。
医薬品でもないのに、まるで医薬品のような効果効能があるような表現の商品がはびこらないよう、規制する法律なのです。
この内、みなさんが理解しておくべき原理原則論は「第10章 医薬品等の広告」です。
下記に条文をご紹介いたします。
(誇大広告等)
第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。
誇大広告に関する規定ですが、「何人(なんびと)も」と記載あるように、広告主だけでなく、ライターやアフィリエイター・インフルエンサーも規制対象となることが分かります。
(特定疾病用の医薬品及び再生医療等製品の広告の制限)
第67条 政令で定めるがんその他の特殊疾病に使用されることが目的とされている医薬品又は再生医療等製品であつて、医師又は歯科医師の指導の下に使用されるのでなければ危害を生ずるおそれが特に大きいものについては、厚生労働省令で、医薬品を指定し、その医薬品に関する広告につき、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告方法を制限する等、当該医薬品の適正な使用の確保のために必要な措置を定めることができる。
2 厚生労働大臣は、前項に規定する特殊疾病を定める政令について、その制定又は改廃に関する閣議を求めるには、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。ただし、薬事・食品衛生審議会が軽微な事項と認めるものについては、この限りでない。
「アフィリエイトサイトやインフルエンサーのSNS投稿は広告なの?」と言う疑問については、下記要件を満たせば「広告」に該当すると言われています。
- 誘引性:顧客を誘引する意図が明確であること
- 特定性:特定の商品名が明らかにされていること
- 認知性:一般人が認知できる状態であること
▶︎ 広告代理店や制作会社が薬機法違反の対策をするべき理由と具体的な対策方法
▶︎ アフィリエイターが薬機法の対策をするべき理由と具体的な対策方法
▶︎ インフルエンサーやYouTuberが薬機法違反の対策をするべき理由と具体的な対策方法
罰則
行政指導
行政が行う是正措置を指します。
具体的には違法状態の是正と報告書の提出を求められます。
刑事罰
第85条 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。4 第66条第1項又は第3項の規定に違反した者5 第68条の規定に違反した者
第86条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
15 第67条の規定に基づく厚生労働省令の定める制限その他の措置に違反した者
課徴金
2021年8月から新たに、行政からの課徴金命令(違法によって得た利益の没収)が導入される予定です。
みなさんが目にする(運営している)WebサイトやSNS、広告はいかがでしょう?
世のWebサイトやSNS、広告を眺めていると、薬機法を遵守せずに発信されているケースが散見されます。
率直に申し上げると、今後は非常にリスキーです。
措置命令の流れ
下記いずれかを発端に発覚し、広告主・ASP(Affiliate Service Provider)へ連絡・措置命令が至るケースが大半です。
- 同業者の告発
- 消費者からの消費者センターへの苦情
- 行政の自発的なパトロール
なお、アフィリエイターやインフルエンサーが直接罰則を受けた例は、現時点でまだ聞かれません。
ただし違反アフィリエイトサイトを通じて、広告主・ASPが告発・罰則が適用され、その後、間接的にアフィリエイターへ波及するケースはあります。
広告主からの提携解除やASPアカウントの停止に及んでしまえば、アフィリエイターやインフルエンサーにとっても死活問題と言えるでしょう。
注意すべき規制ジャンル
健康食品(サプリ)
健康食品は薬機法第68条の規定で、医薬品、医療機器及び再生医療等製品の「認証を受けていないもの」に該当。
(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第68条 何人も、第14条第1項又は、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。
すなわち、健康食品を扱うメーカーや販売業者などの広告主はもちろん「何人(なんびと)も」に当たるアフィリエイターやインフルエンサーは、健康食品の広告・記事で医薬品と誤解されるような言及・暗示に及ぶと薬機法違反となることを意味します。
お客さまの立場になると分かりやすいかと思いますが「医薬品ではない健康食品があたかも医薬品のように売られ、そういった商品を扱う会社が不当な利益を得る社会・市場は健全か?」という問題認識です。
ただし、健康食品の中でも、下記に分類される商品は、定められた効能効果を標ぼうすることができます。
- 特定保険用食品(トクホ):効能効果表現を消費者庁に許可してもらう
- 栄養機能食品:一定の基準をクリアすれば予め定めている効能効果表現が言える
- 機能性表示食品:エビデンスをもって、健康食品の具体的な効果について言える
取り扱える商品の幅は狭まりますが、薬機法対策の負担とリスクを軽減するために、これら効能効果を標ぼうできる商品だけを取扱うという戦略もありえます。
美容化粧品(コスメ)
美容化粧品は、薬機法上、規制対象となる商品です。
健康食品と異なり、訴求できる56の効能効果表現が明文化されています。
<化粧品で標ぼう可能な効能効果>
No. | 効能効果 | No. | 効能効果 |
1 | 頭皮、毛髪を清浄にする | 2 | 香りにより毛髪、頭皮の不快臭を抑える |
3 | 頭皮、毛髪をすこやかに保つ | 4 | 毛髪にはり、こしを与える |
5 | 頭皮、毛髪にうるおいを与える | 6 | 頭皮、毛髪のうるおいを保つ |
7 | 毛髪をしなやかにする | 8 | クシどおりをよくする |
9 | 毛髪のつやを保つ | 10 | 毛髪につやを与える |
11 | フケ、カユミがとれる | 12 | フケ、カユミを抑える |
13 | 毛髪に水分、油分を補い保つ | 14 | 烈毛、切毛、枝毛を防ぐ |
15 | 髪型を整え、保持する | 16 | 毛髪の帯電を防止する |
17 | (汚れを落とすことにより)皮膚を清浄にする | 18 | (洗浄により)にきび、あせもを防ぐ(洗顔料) |
19 | 肌を整える | 20 | 肌のキメを整える |
21 | 皮膚をすこやかに保つ | 22 | 肌荒れを防ぐ |
23 | 肌をひきしめる | 24 | 皮膚にうるおいを与える |
25 | 皮膚に水分、油分を補い保つ | 26 | 皮膚に柔軟性を保つ |
27 | 皮膚を保護する | 28 | 皮膚の感想を防ぐ |
29 | 肌を柔らげる | 30 | 肌にはりを与える |
31 | 肌にツヤを与える | 32 | 肌を滑らかにする |
33 | ひげを剃りやすくする | 34 | ひげそり後の肌を整える |
35 | あせもを防ぐ(打粉) | 36 | 日やけを防ぐ |
37 | 日やけによるシミ、ソバカスを防ぐ | 38 | 芳香を与える |
39 | 爪を保護する | 40 | 爪をすこやかに保つ |
41 | 爪にうるおいを与える | 42 | 口唇の荒れを防ぐ |
43 | 口唇のキメを整える | 44 | 口唇にうるおいを与える |
45 | 口唇をすこやかにする | 46 | 口唇を保護する。口唇の乾燥を防ぐ |
47 | 口唇による乾燥によるカサツキを防ぐ | 48 | 口唇を滑らかにする |
49 | ムシ歯を防ぐ(使用時のブラッシングを行う歯みがき類) | 50 | 歯を白くする(使用時のブラッシングを行う歯みがき類) |
51 | 歯垢を除去する(使用時のブラッシングを行う歯みがき類) | 52 | 口中を浄化する(歯みがき類) |
53 | 口臭を防ぐ(歯みがき類) | 54 | 歯のやにを取る(使用時にブラッシングを行う歯みがき類) |
55 | 歯石の沈着を防ぐ(使用時のブラッシングを行う歯みがき類) | 56 | 乾燥による小ジワを目立たなくする |
裏を返せば、規定された表現を遵守していれば、違反となりません。
グレーゾーンの広い健康食品に比べると、比較的対策が取りやすいジャンルと言えますが、逸脱すると薬機法違反となります。
薬用化粧品(医薬部外品)
「医薬部外品」も薬機法上の規制対象。
医薬品ほど作用は強くないが、一定の効能効果の承認を受けた商品です。
化粧品の中でも薬用化粧品として「医薬部外品」にカテゴライズされる商品は、化粧品で認められた56の表現に加え、下記の通り、予防に関する効能効果を標ぼうすることができます。
<薬用化粧品で標ぼう可能な効能効果>
種類 | 効能効果 |
シャンプー |
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リンス |
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化粧水 |
※2008年4月1日以降申請のものは「日やけ・雪やけ後のほてりを防ぐ」
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パック |
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薬用石けん(洗顔料を含む) | <殺菌剤主剤のもの>
<消炎剤主剤のもの>
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注意すべき違反例
代表的な例を一部抜粋します。
疾病の治療又は予防を目的とする
- 効能効果ガンに効く
- 高血圧の改善
- 生活習慣病の予防
- 動脈硬化を防ぐ
身体の組織機能の一般的増強、増進を主たる目的とする効能効果
- 疲労回復
- 新陳代謝を高める
- 肝機能向上
- 細胞の活性
よくある誤解
- お客さまの体験談で標ぼうする分にはOK:誤り
- お客さまの体験談において「※あくまで個人の感想です」といった打ち消し表現があればOK:誤り
- 断定表現でなければOK:誤り
- 商品ではなく成分の効能効果ならOK:誤り
- 科学的な論文を引用すればOK:誤り
- 成分の効能効果を一般論として展開する「コンテンツページ」と効能効果には言及せず、該当成分を含んでいることのみを表記した「商品ページ」を別ページにすればOK:誤り
まとめ
- 規制対象は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品
- 誇大広告に関する規定は、広告主だけでなく、ライターやアフィリエイター・インフルエンサーも規制対象
- 行政指導・刑事罰に加え、2021年から課徴金制度の罰則が導入される
- 健康食品も「認証を受けていないもの」として規制対象