広告代理店や制作会社が薬機法違反の対策をするべき理由と具体的な対策方法

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この記事では、広告代理店や制作会社が薬機法(旧・薬事法)違反の対策をするべき理由と具体的な対策方法について、わかりやすく解説します。

その背景にあるのが、2020年7月、Web広告・健康食品(サプリ)業界に衝撃を与えた『ステラ漢方事件(後述)』。

この事件の何が衝撃だったのかと言うと、健康食品を展開する広告主(ステラ漢方)だけでなく、同社を支援する立場に過ぎない広告代理店と制作会社までもが薬機法違反で逮捕されたことです。

従来、薬機法違反の立件対象は、広告主であるメーカーだけでした。

薬機法違反の広告が乱立する中、ついにその対象が広告主にとどまらないことが前例として示されたわけです。

健康食品関連企業を支援する事業者(広告代理店、ASP、制作会社、PR会社)およびブロガー、ライター、アフィリエイター、インフルエンサーの方は、ぜひご覧ください。

※本ページはプロモーション(広告)が含まれています

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広告代理店や制作会社までも薬機法違反で逮捕された『ステラ漢方事件』

逮捕の対象 効果効能訴求の対象
従来の薬機法違反の事件 広告主 ガン、糖尿病、新型コロナウイルスといった重篤な疾患
ステラ漢方事件 広告主、広告代理店、制作会社 重篤とまでは言えない肝臓疾患

『ステラ漢方事件』の概要

2020年7月20日に大阪府警が、健康食品の通信販売を展開する『ステラ漢方』や同社を支援していた広告代理店2社(『KMウェブコンサルティング』『ソウルドアウト』)および委託先の制作会社(社名非公開)の代表・従業員ら6名を薬機法違反(未承認医薬品の広告)の疑いで逮捕した事件です。

薬機法違反の経緯

2019年11月に、同広告内容について情報提供があったことから捜査開始し、下記の疑いがあるとされ、逮捕に至りました。

  • 出稿した、健康食品『肝パワーEプラス』の記事広告において「肝臓疾患の予防に効果がある」と宣伝した
  • 広告内で、捏造した体験談を掲載した

『ステラ漢方事件』が持つ意味

『ステラ漢方事件』が持つ意味を、従来の薬機法違反の事件との比較でまとめました。

逮捕の対象 効果効能訴求の対象
従来の薬機法違反の事件 広告主 ガン、糖尿病、新型コロナウイルスといった重篤な疾患
ステラ漢方事件 広告主、広告代理店、制作会社 重篤とまでは言えない肝臓疾患

逮捕の対象が広がった

従来の薬機法違反の事件では、逮捕の対象は、違反広告の責任主体である広告主でした。

しかし『ステラ漢方事件』では、広告主の依頼に基づいて支援する立場に過ぎない広告代理店と制作会社までもが逮捕されました。

現段階で全容は明らかになっておりませんが、このことは広告代理店や制作会社の関与の度合によっては、逮捕の対象になりうることが前例と示されたわけです。

効果効能訴求の対象が広がった

従来の薬機法違反の事件では、効果効能訴求の対象は、ガン、糖尿病、新型コロナウイルスといった重篤な疾患でした。

まるで医薬品であるかのように「ガンに効く」などとうたう健康食品が乱立しては、本来受けるべき適切な医療機会を奪うことにもなります。

健康・生命への影響度を考慮すると当然な措置と言えます。

しかし『ステラ漢方事件』では、重篤とまでは言えない肝臓疾患に対する効果効能表現までもが違反とみなされました。

このことは、あらゆるジャンルの健康食品を扱う事業者が、逮捕の対象になりうることが前例と示されたわけです。

薬機法違反の逮捕要件が厳格化された背景

ステラ漢方事件』で、逮捕要件が厳格化された背景。

あくまで推察ですが、今回、特に問題視されたのは、体験談の捏造だと言われています。

体験談は、消費者が商品やサービスを選ぶ際、最も参考にする情報の一つですが、この心理を利用した悪質な行為と捉えたのでしょう。

同様の事件としては、2020年3月の『グノシー事件』が記憶に新しいところ。

ニュースアプリの大手「グノシー」の子会社が、架空の口コミを使った虚偽広告を配信したとして、薬機法違反の疑いで調査が入った事件です。

現在、アフィリエイトやインフルエンサーによる口コミでは、体験談の捏造は常態化しているとも言われており、内部告発や同業者の情報提供などで明るみになれば、どの事業者も当事者になり得る事案です。

広告主にとっても、自社が与り知らないところで体験談の捏造されていればあおりを受ける以上、ひとごとではないのは言うまでもありません。

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広告代理店や制作会社がおさえておくべき薬機法の基礎知識

薬機法は、下記の有効性や安全性を確保するために定められました。

  • 医薬品
  • 医薬部外品
  • 化粧品
  • 医療機器
  • 再生医療等製品

この内、みなさんが理解しておくべき原理原則論は「第10章 医薬品等の広告」です。

下記に条文をまじえてポイントを解説いたします。

広告主だけでなく、広告代理店や制作会社、ライター・アフィリエイター・インフルエンサーも規制対象となる

(誇大広告等)
第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

条文内の「何人(なんびと)も」という記載がそれを示します。

医薬品でもないのに、まるで医薬品のような効果効能があるような表現はNG

(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第68条 何人も、第14条第一項、第23条の2の5第1項若しくは第23条の2の23第1項に規定する医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であつて、まだ第14条第1項、第19条の2第1項、第23条の2の5第1項、第23条の2の17第1項、第23条の25第1項若しくは第23条の37第1項の承認又は第23条の2の23第1項の認証を受けていないものについて、その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。

健康食品は、すべて未承認医薬品にあたり、効能、効果又は性能に関する広告は禁じられています。

すなわち、健康食品を扱うメーカーや販売業者などの広告主はもちろん「何人(なんびと)も」に当たる広告代理店や制作会社・アフィリエイター・インフルエンサーは、健康食品の広告・記事で医薬品と誤解されるような言及・暗示に及ぶと薬機法違反となることを意味します。

お客さまの立場になると分かりやすいかと思いますが「医薬品ではない健康食品があたかも医薬品のように売られ、そういった商品を扱う会社が不当な利益を得る社会・市場は健全か?」という問題認識です。

ただし、健康食品の中でも、下記に分類される商品は、定められた効能効果を標ぼうすることができます。

  • 特定保険用食品(トクホ):効能効果表現を消費者庁に許可してもらう
  • 栄養機能食品:一定の基準をクリアすれば予め定めている効能効果表現が言える
  • 機能性表示食品:エビデンスをもって、健康食品の具体的な効果について言える

取り扱える商品の幅は狭まりますが、薬機法対策の負担リスクを軽減するために、これら効能効果を標ぼうできる商品だけを取扱うという戦略もありえます。

薬機法上の広告の定義

薬事法上、下記要件を満たせば「広告」に該当すると言われています。

誘引性:顧客を誘引する意図が明確であること
特定性:特定の商品名が明らかにされていること
認知性:一般人が認知できる状態であること

これに触れない単なるブログやコラムでの感想なら、情報源や信憑性は問われますが、効果効能をうたっても表現の自由とされます。

広告代理店や制作会社の方は、まずこの3要件を知っておくだけでも、判断がしやすくなります。

罰則

行政指導

行政が行う是正措置を指します。

具体的には違法状態の是正報告書の提出を求められます。

刑事罰

第85条 次の各号のいずれかに該当する者は、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。4 第66条第1項又は第3項の規定に違反した者5 第68条の規定に違反した者

第86条 次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役若しくは100万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
(中略)
15 第67条の規定に基づく厚生労働省令の定める制限その他の措置に違反した者

なお『ステラ漢方事件』では、福岡にある会社(広告主)が大阪府警によって逮捕されましたが、商品購入者が大阪にいれば、大阪府警にも捜査権が発生します。

また行政とは異なり、体験談の捏造の裏付けまで捜査できる点、行政よりも追及はシビアです。

課徴金

2021年8月から新たに、行政からの課徴金命令(違法によって得た利益の没収)が導入される予定です。

行政指導、刑事罰、課徴金だけでなく、表示の全面改訂・製品回収・広告中止による実損害やレピュテーションリスクなど、事業運営に多大な影響を及ぼします。

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広告代理店、制作会社にオススメする、具体的な対策方法

薬機法違反は、知らなかったでは済まされません

不安がある場合は、すぐに下記いずれかの対策をオススメします。

対策方法ごとにメリット・デメリットもまとめましたので、ご自身に合った対策をお選びください。

自社で広告・記事を見直して修正(リライト)・削除・中止する

薬機法違反の要件を踏まえて広告・記事を見直し、違反表現があったら修正(リライト)・削除する、最もシンプルな対策です。

体験談の捏造が進行中であれば、当然中止し、実際に体験していただく体制に切り替えましょう。

判断に迷う場合は、各都道府県の行政機関(薬務課)に問い合わせるか、信頼できる専門家が発信した書籍やサイトで確認しましょう。

メリット

・コストがかからない

デメリット

・自社のリソースを取られる

・専門知識や最新動向に関する情報が必要

・見落としや先入観や思い込みによる誤解で、修正漏れが起こりやすい

薬機法の広告表現チェックサービスを利用する

薬機法の違反ルールは、条文だけでなく、厚生労働省などの行政が発令する無数の通知を網羅して、はじめて理解できる代物です。

これらのルールを把握するのは、一般人には不可能に近く、担当行政と薬機法の専門家のみと言っても過言ではありません。

確実な対策をとるには、専門の広告表現チェックサービスを利用することをオススメします。

メリット

・自社のリソースをとられずに済む関連法令(景品表示法・健康増進法)含めた的確なチェックが期待でき、違反防止効果が高い訴求力や反響をケアした言い換え表現の提案をしてくれることが多い

デメリット

・費用がかかる

薬機法の専門知識を高める人材育成サービスを利用する

具体的には、資格(薬機法管理者)・セミナー・講座・教材(代替表現集)サービスの活用です。

自分でチェックするのは大変だし自信もないけれど、広告や記事をつくるたびに広告表現チェックサービスを利用するのも費用面で現実的でない」という方も多いかと思います。

そんな方は、最低限の薬機法の知識を体系的に学ぶことが、効率と費用の面で有効です。

中国の老子の言葉に「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」とあるよう、一度、身につけたノウハウは一生モノの財産。

時間はかかりますが、健康食品関連企業を支援する事業者としてリスクマネジメントするためには、避けては通れない道かもしれません。

メリット

  • 専門知識や最新動向に関する情報が体系的に習得できる
  • 初期投資は必要だが、長い目で見ると広告チェックサービスよりは効率と費用の面で有効
  • 広告主に信頼され、差別化ポイントとなる

デメリット

  • 自社のリソースを取られる
  • 広告チェックサービスに比べると、チェックの確実性は劣る

薬機法に関する社内ガイドラインを作成する

薬機法に関する一定のルールが定められていなければ、薬機法違反のリスクが高まります。

NG事項の洗い出しやチェックの運用などを明文化した、社内ガイドラインを作成することで、組織としてリスクマネジメントが可能となります。

作成したガイドラインは、アフィリエイターやインフルエンサーにも共有しておきましょう

行政からも対策を講じていたとみなされ、万が一、追及された場合の抗弁材料となります。

メリット

  • チェック対象や責任が明確になり、抜け漏れや認識ミスが防げる
  • 誰がチェックしても、同じレベルで効率良くチェックできる

デメリット

  • 形骸化しやすい

注意したいのは、薬機法違反の問題をクリアしたとして、お客さまに商品の魅力が伝わらなければ、買う人はいないということ。

リスクマネジメントとマーケティングを高いレベルで両立させて、初めて意味のある対策と言えます。

対策サービスを利用する際は、このバランスが考慮されているか?がチェックポイントになるでしょう。

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まとめ

  • 『ステラ漢方事件』で、広告代理店や制作会社の関与の度合によっては、薬機法違反で逮捕の対象になりうることが前例と示された。
  • 特に問題視されたのは、体験談の捏造であり、どの事業者も薬機法違反の当事者になり得る。
  • 行政指導・刑事罰に加え、2021年から課徴金制度の罰則が導入される
  • 自社で広告・記事を見直して修正(リライト)・削除・中止することが難しい場合「広告表現チェックサービス」や「人材育成サービス」の利用が対策方法として有効で、できれば「社内ガイドライン」を作成することが望ましい。
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